第1回:ベテラン職員の突然の退職──“無意識のパワハラ”が生んだ静かな決断

「知らぬ間に誰かを傷つけていた──介護現場の“見えないハラスメント”」シリーズ
“毎日ちゃんとやってくれてたから、大丈夫だと思ってた”──でも、その沈黙こそがサインだった。
「今日で辞めさせていただきます。」
その一言を最後に、10年以上働いてきたベテラン職員・佐藤さんは現場を去った。
連絡もなく、突然の退職届。管理者である私は、ただ茫然とするしかなかった。
「何かあった?」と周囲に聞いても、誰も心当たりがないという。
佐藤さんはいつも明るく、責任感も強い。
新人にも優しく、文句も言わず、黙々と働いてくれる存在だった。
だからこそ、安心して任せきっていた。
「ベテランだから大丈夫」
「愚痴を言わないのは、満足してる証拠」
そう、思い込んでいた。
だが、その「沈黙」こそが、最初のSOSだったと気づいたのは、ずっと後のことだった。
無意識の言葉が“針のように”刺さる
「ベテランならこれくらい、できて当然だよね」
「そのくらいは、自分で考えて動いてくれないと」
「また新人フォロー頼んでもいい? あなただけが頼りだから」
どれも悪意のない言葉だった。
でも、それは“感謝”ではなく、“期待と負担”として重なっていた。
繰り返されるうちに、佐藤さんの中では、“自分だけが我慢している”という孤独が育っていたのだ。
あとで別の職員から聞いた話がある。
「佐藤さんね…最近、よく一人で昼食をとってたんですよ。『休憩中まで気を使うの疲れた』ってぽつりと言ってて…」
そのとき、私は背筋が凍った。
ずっと、“いい人”でいてくれていた佐藤さんの心が、少しずつ壊れていたことに気づけなかった。

「やめない人」ほど、危ないことがある
実は、佐藤さんのような“辞めそうに見えない人”ほど、見えないストレスを抱えやすい。
彼女らは弱音を吐かず、周囲の空気を読み、責任感で無理をする。
そして、限界が来たときには──
何も言わずに、静かに去っていく。
それは「爆発」ではなく、「諦め」であり、「心が折れた証」だ。
見えないハラスメントにどう気づくか?
今回のケースは、「無意識のパワハラ」だった。
命令や罵声ではない。
でも、“過度な期待”や“放置型の信頼”もまた、パワハラの一種になり得る。
本人に悪気はなくても、受け手が傷つけば、それは“加害”になり得るのだ。
では、どうすればよかったのか?
対話の機会を「感謝の言葉」で始めよう
忙しい日々の中でも、ほんの一言で救えることがある。
「いつもありがとう」
「大丈夫?無理してない?」
「あなたがいて助かってるよ」
この3つの言葉を、心から伝えるだけで、沈黙の壁は少しずつ崩れる。
特にベテラン職員ほど、自分からは言い出さない。
だからこそ、こちらから声をかける意味がある。
最後に:辞められてからでは遅い
佐藤さんが辞めて、初めてわかったことがある。
“何も言わない”は、“問題がない”ではなかった。
むしろ、誰よりも頑張って、誰よりも傷ついていたのかもしれない。
私たちができることは、小さな気づきと、小さな声かけから始まる。
そして、職員の沈黙の奥にある「サイン」を見逃さないことだ。
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